契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~
三章 業務外の依頼
 十月半ばの水曜日。
 花本パートナーサービスで働くようになって二か月が過ぎ、この生活にもすっかり慣れた。


 仕事は大変なこともあるけれど、毎日のようにやり甲斐を感じられる。
 指名客には『常連さん』と言える人も増え、モチベーションのひとつになっていた。


 その中でも一番のお得意様は、櫻庭さんだ。
 彼とは、相変わらず顔を合わせる機会は少ない。
 けれど、会えば以前よりも会話を交わすようになったし、櫻庭さんも徐々に心を開き始めてきてくれた気がする。
 今日も彼のマンションを訪れた私は、いつも通り業務に取りかかる。


 高級マンションで過ごすのはまだ慣れない反面、櫻庭さんがいない時の部屋ではすっかり緊張することも気後れすることもなくなった。
 だからこそ、油断してミスをしないように気をつけなければいけないのだけれど。


(今日は根菜が安かったから、筑前煮とごぼうサラダと……ってまた茶色いおかずになっちゃうけど……)


 洗濯機を回している間に買い出しを終えて、メニューを改めて考えながら苦笑を漏らしてしまう。
 私が準備する料理は、つい地味なものになりがちだ。
 ハンバーグやドリア、グラタンも作るけれど、日持ちしたり手軽に摘まめたり……というのを考えると、やっぱり煮物やおばんざいが中心になってしまう。
 ただ、彼は和食が好きなようだし、茶色いおかずも気に入ってくれている様子なのが幸いだった。

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