契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~
 順調に料理を作っていき、それらを冷ましている間に掃除を始める。
 といっても、櫻庭さんの家はいつも綺麗だから、あまり時間はかからない。


 富裕層のお宅での掃除はほとんどが、『汚れているからする』というよりも『現状維持』というイメージを持つことが多い。
 汚れも散らかっていることも、あまりないのだ。
 彼の家は特に綺麗だから、掃除は手間も時間もかからない。


「あれ?」


 玄関の掃除をしていた時、棚の上にA4サイズの封筒が置いてあることに気づいた。
 一昨日ここに訪れた時に鉢合わせた櫻庭さんから、『テーブルの封筒は水曜に持っていくものだから、そのままにしておいてくれ』と言われたものだ。


 封筒は、小さな観葉植物の鉢と壁の間に立てかけるようにしてある。
 今朝置かれたのか、それとも前以て置かれていたのかはわからない。
 ただ、これが彼が話していた封筒であることは間違いないだろう。


(忘れ物……かな? でも、必要じゃなくなって置いていったのかもしれないし)


 この部屋を見てわかる通り、櫻庭さんは几帳面でしっかりしている。
 きっと、仕事も完璧にこなす人だと思う。
 そんな彼が、こんな形で忘れ物をするとは考えられない。

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