契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~
(でも、もし忘れたんだとしたら……)


 グルグルと回る思考の中、そこに至ってしまう。
 余計なことだとわかっていながら、すぐさま櫻庭さんにメッセージを送った。


【お世話になっております。封筒が玄関に置いてあるのですが、こちらは本日必要なものではありませんか? もしよろしければ、職場までお持ちいたします】


 直後、やっぱりお節介だったかもしれない……と不安が過る。
 万が一、忘れていたのだとしたら、彼から【持ってきてほしい】と連絡が来るんじゃないんだろうか。
 落ち着かない気持ちのまま掃除の続きして、キッチンの片付けも済ませる。
 けれど、その間に返信はなかった。


 そもそも、私が気にする必要はないことだろう。
 櫻庭さんは私との関係を周囲に知られたくなさそうだったから、職場に行くのは控えるべきに違いない。
 そう思いながらも、彼が困るかもしれない……という気持ちが拭えずにいる。
 もしどうしても必要なものだったら……と思い、私は意を決した。


(職場に着くまでに櫻庭さんからの連絡がなかったら、封筒を持ち出したことはあとできちんと事情を説明しよう)


 急いで帰り支度をし、封筒を手にして櫻庭さんの家を後にする。
 コンシェルジュに事情を話してまた戻ってくるかもしれないことも伝えた上で、マンションを出た。

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