こちらヒロイン2人がラスボスの魔王と龍になります。
祝福はまだ続いている
「悪かったと、とりあえず言わせてくれ」
ブリアンは頭を下げジーナも頭を下げた。
「いや私を助けてくれてありがとう、感謝する」
こう返すとブリアンは溜息を吐いて頭をあげる。
「そう言うと思ったけど本当にそう返されると戸惑うな。なぁ隊長。怒っても良いんだぜ」
ルーゲン師のもとを訪問してからジーナはブリアンのもとも訪ねた。
彼は見舞いには来ており挨拶を交わしたものの、どこかぎくしゃくしたものを残していた。
二人きりで話したいことがある、その態度からはそんな言葉を感じた。そうであるからキルシュが言付けに訪れた際は意外さは無く、了解をする。
二人で話したいことがあるので午後に広場の片隅に来て貰いたい、と。会った際はまだ固さがありどこかイライラしたものもあったが、一呼吸を置いてから一気に素早く謝罪をした。
その言葉も予想ができたがジーナもまた相手の予想通りのことをし、ブリアンは呆れた。
「怒っても良いと言うが、私はお前が近衛のものとなっても褒美をもらっても別に構わないのだが」
「あんたはそう言うけどな、普通だったらこういうのが礼儀なんだよ。まぁ礼儀の問題で済むかどうかは別にしてな。それで悪かったというのはな、あんたは気づいていないかもしれないし気にしないかもしれないけれど、言うまでもなくあの件だ。あの龍を討つ際の時に……その」
「私が龍の首を斬ったのに手柄を自分のものとしてしまったことが気になって仕方ない、これが言いたのか? 言い難いことなのは分かるが」
ブリアンの表情が更に硬くなって青白さまで加わりだした。そうなのだろうか?
「つまり私が斬ったでいいのか」
首は動いていないのにブリアンの首は左右に動いたように見えた。震えなのか?
「ほっ本当のところ、俺だって分からない」
「でも今は驚いていたな。それはなんだ? あれは私のことを思っての嘘か」
「そうじゃない」
息を吹き返したように大声を出しブリアンは苦し気に喘いだ。
「すまない。いやあんたがわざと証言しなかったのかなと思ってな。分からないのは本当だが、言っていないこともある。そこをいま伝えたいんだ。それはな、隊長は龍を斬ったのは間違いないんだ。俺が龍を刺した時に返り血が飛んできて顔にかかったからな」
掌で顔を叩きブリアンは血がかかったことを強調する。目潰し、といい続ける。
「そうどのくらい斬ったのか見ようとしたけど、眼に血が入ってな分からない、拭おうとしたらあんたと同じく身体にドンッと衝撃が来て気絶だ」
そのあとは何度聞いたか分からないあの隊員たちの証言である駆け付けた際は龍は倒れ伏し消滅がはじまっており検証は不能、それでおしまい、と。
「なぁ隊長。これはな、手柄の話とかそういうのじゃなくてよ、純粋にさ、どっちの剣が龍を倒したと感じる?」
不安が声に宿っていた。自分がやったのではないのかという不安。こちらがやったのではないという不安。
だけどもジーナは首を振った。そのどちらでもないということで。
「私がやったとは感覚がないから正しいとはいえない。こういうのはどうだろう。もしかしたらあの龍はかなり弱っていて二人の同時攻撃による少しの傷でショック死をした可能性。これだとお互いに手ごたえがなくても仕方がない。もうひとつの可能性を私は考えた……自決だ」
自決? とブリアンの眼は光りそれが龍の最後の表情を思い起こされた。あれは瞼を閉じそれから……
「斬る直前に龍は目をつぶった。それからすぐに衝撃が来た。あれは自らの力を内側に閉じ込めて破裂させたとかではないか? そんなことできるのかといわれたら、そんなのは龍のやることだから分からないになるが。だいたいあの衝撃は何なのかまるで不明だしな」
「そうか刺し違い、相打ち狙いならやってもおかしくないな」
反論無くすっかりその気になったブリアンはしきりにそうだそうだというがジーナは考える。
あれが自分に向けての最後の抵抗だとしたらいったいその理由は? あの龍の態度からするに……
「……そんなに私に討たれるのが嫌だったのか?」
「あーなるほど、な。それだとかなり納得感が増すな。それだぜ隊長それそれ」
ブリアンが喜びながら手を握ってきた。これで全て解決だというように、いや違うとジーナは手を離した。
「短絡的に納得し過ぎだ。なんだお前といい隊員達といいついでにあの龍といい、みんな私に龍を討たせたくなくて仕方がないようじゃないか」
「待って待て落ち着いてくれ隊長。いやそれはだってさ、だって」
慌てているのはブリアンだがジーナは考えがまとまるまで待つことにし、あの時の言葉を思い出していた。
龍は自分に討たれるのを拒否していた『ジーナではないものに討たれるわけにはいかない……』と。
「そのだな隊長、これはここだけの話にして欲しいんだけどいいよな? 他所で話して貰いたくないんだ。まぁ隊長はベラベラあちこちに話すってタイプじゃないから大丈夫だけど、念のためだ」
「そんな危ない話なら無理して話さなくてもいいぞ」
「危ないというか、その笑われるというか、そういう類の仮説なんだがよ……もしかして隊長って龍の一族じゃないのか」
あまりの言葉にジーナは理解ができなくしばらく黙ってからやっとその言葉が頭に染み込んできたために弾き飛ばすように、返した。
「そんな馬鹿な!」
「馬鹿なのは分かってる。だから人には話さないでくれ。これで受勲の話が無くなったらあんまりだからな。仮にだよ仮に、妄想でしかない仮定で仮説だが、馬鹿といわずに聞いてくれ。龍がさ隊長が同族のものだと気づいたからこそ同族殺しを防ぐべく、自爆した。ほら同族同士で殺したくないって人情じゃん」
「龍に人情などあるものか」
「なら龍情ってやつで。いや冗談ではなくてさ、だって隊長も固まってたろ。あの龍の瞳の光りにさ。隊長と同じ金色の光りが直撃して他の誰よりも固まっていてよ」
言われてジーナはまた固まった。そうだあの龍の金色。龍の鱗が紫に見えた幻覚と同じく、あの光も同様の幻視だと思っていたが、この男はしっかりと見ていた。同じ金色であると。
「そんなことは私にだって分からない」
「でも関係はあるでしょう。いやこんなの偶然では片付けられない。まぁこれだけでなくて俺はずっと前から隊長が龍の関係者だと睨んでいたぜ。龍への信仰が無いのに龍のために誰よりも戦って、待てよ首を振らなくていい。不信仰者なのに龍身様や側近たちとの仲は良くて、だから否定しないでくれ。最後の最後の使命の時に、あんたは龍を斬ることに躊躇い固まった。そういうことだったんだよ。だからこの役目は俺が引き受けたかった。受勲したいというのもあるけど、そういう気持ちもあったことは理解してほしい」
違う、と言うべきなのにジーナはその言葉が口から出せなかった。
羅列された事柄の一つ一つはそうではないと口では言えるが、行動ではその言葉を裏切り嘘をつくこととなる。
壁があり、心と体を分かつ一点が自分の意識、そう私は龍を討つものでしかないのだというそれのみであり、そしてそれはジーナという存在の核であり、それがこの世界とのズレを生じさせているのだろうか。
「そうは言うが私は龍への信仰には決して目覚めることは無い」
「口ではそう言うけどあんたはもうすっかりそれだよ。まぁ最近ではなくて昔から……ソグにいた頃からだけどな」
ブリアンがまたなにかおかしなことを言い出したのでジーナは聞きたくないと立ち上がると、言葉がその身体を斬り裂いてきた。
「ソグで龍の護衛をしていた頃のあんたはすごく楽しそうだったな」
「嘘だ」
ジーナの身体はあの頃の苦痛が甦った足元から鳩尾に背から肩にそして首に、その絞め付けるものが這い上がる。
「俺だけの感想じゃないみんなの感想だ。それまでのあんたは戦い以外に興味のなく望むのは戦場という一人の修羅だった。元々そういう人だったのかと見ていたけど、違った。あの任務に就いてから雰囲気が変わったよ。それで分かったんだあんたは本来そういう人だってさ」
なぜこんなに認識に差異が生まれるのか? だからああまでみな自分に構うのかと。だがどうしてここまで?
混乱しているなかジーナの鼻先にソグの匂いがした。はじめに認識した龍の館のあの匂い。あの香木の匂い、あの最初の日の香り。
「あっそうそうこれキルシュから。ソグの香木だってさ。なんか隊長はハイネちゃんが香木を焚いて嗅がせたら起きたってことらしいな。だからお祝いにだってさ。受け取ってくれよ」
こちらの反応などお構いなしにブリアンは香木をジーナに押し付け立ち上がった。
「じゃあ俺はもう行くよ。受勲の打ち合わせがあるしそれと今後のことについてもな。隊長はどうするんだ? 第二隊が解散した後はさ。ほらみんな病み上がりで気を遣って話していないだろうが考えはあるのか」
「……解散は近いのか?」
「そんなことはない。中央の復旧の目途が立ち龍身様が龍となられた時が戦争の終わりだから、その時だろうな。俺は近衛兵になる方に進む。キルシュもそれを望んでいるからな、悪くは思わないでくれ」
「全然悪いとは思っていない。頑張ってくれ」
「それで、あんたは?」
ブリアンは心配そうに、寂しそうに尋ねた。迷子に話しかけた時にそういう声をするのだろうか? ジーナはそれを連想した。
「心配しなくていい。もとより決まっている。私の進む道は一つだったからな」
答えるとブリアンは笑った。キルシュのよく自慢する笑顔、裏表のない眩しいそれをジーナも好きであった。
「内容は聞かないぜ。あんたはどう選ぼうときっと正しき方へ、もっと言えば龍のためになる方を選ぶだろうからな」
「そう思うか?」
ブリアンの腕が首に巻きついた。
「思うに決まってる。今までそうだった。だからこれからもそうだ。俺も隊みんなもそう思っている。あんたには龍の血の汚れはない。祝福はまだ続いている。これからもずっとだ」
「……そう思っていてくれ」
ブリアンは頭を下げジーナも頭を下げた。
「いや私を助けてくれてありがとう、感謝する」
こう返すとブリアンは溜息を吐いて頭をあげる。
「そう言うと思ったけど本当にそう返されると戸惑うな。なぁ隊長。怒っても良いんだぜ」
ルーゲン師のもとを訪問してからジーナはブリアンのもとも訪ねた。
彼は見舞いには来ており挨拶を交わしたものの、どこかぎくしゃくしたものを残していた。
二人きりで話したいことがある、その態度からはそんな言葉を感じた。そうであるからキルシュが言付けに訪れた際は意外さは無く、了解をする。
二人で話したいことがあるので午後に広場の片隅に来て貰いたい、と。会った際はまだ固さがありどこかイライラしたものもあったが、一呼吸を置いてから一気に素早く謝罪をした。
その言葉も予想ができたがジーナもまた相手の予想通りのことをし、ブリアンは呆れた。
「怒っても良いと言うが、私はお前が近衛のものとなっても褒美をもらっても別に構わないのだが」
「あんたはそう言うけどな、普通だったらこういうのが礼儀なんだよ。まぁ礼儀の問題で済むかどうかは別にしてな。それで悪かったというのはな、あんたは気づいていないかもしれないし気にしないかもしれないけれど、言うまでもなくあの件だ。あの龍を討つ際の時に……その」
「私が龍の首を斬ったのに手柄を自分のものとしてしまったことが気になって仕方ない、これが言いたのか? 言い難いことなのは分かるが」
ブリアンの表情が更に硬くなって青白さまで加わりだした。そうなのだろうか?
「つまり私が斬ったでいいのか」
首は動いていないのにブリアンの首は左右に動いたように見えた。震えなのか?
「ほっ本当のところ、俺だって分からない」
「でも今は驚いていたな。それはなんだ? あれは私のことを思っての嘘か」
「そうじゃない」
息を吹き返したように大声を出しブリアンは苦し気に喘いだ。
「すまない。いやあんたがわざと証言しなかったのかなと思ってな。分からないのは本当だが、言っていないこともある。そこをいま伝えたいんだ。それはな、隊長は龍を斬ったのは間違いないんだ。俺が龍を刺した時に返り血が飛んできて顔にかかったからな」
掌で顔を叩きブリアンは血がかかったことを強調する。目潰し、といい続ける。
「そうどのくらい斬ったのか見ようとしたけど、眼に血が入ってな分からない、拭おうとしたらあんたと同じく身体にドンッと衝撃が来て気絶だ」
そのあとは何度聞いたか分からないあの隊員たちの証言である駆け付けた際は龍は倒れ伏し消滅がはじまっており検証は不能、それでおしまい、と。
「なぁ隊長。これはな、手柄の話とかそういうのじゃなくてよ、純粋にさ、どっちの剣が龍を倒したと感じる?」
不安が声に宿っていた。自分がやったのではないのかという不安。こちらがやったのではないという不安。
だけどもジーナは首を振った。そのどちらでもないということで。
「私がやったとは感覚がないから正しいとはいえない。こういうのはどうだろう。もしかしたらあの龍はかなり弱っていて二人の同時攻撃による少しの傷でショック死をした可能性。これだとお互いに手ごたえがなくても仕方がない。もうひとつの可能性を私は考えた……自決だ」
自決? とブリアンの眼は光りそれが龍の最後の表情を思い起こされた。あれは瞼を閉じそれから……
「斬る直前に龍は目をつぶった。それからすぐに衝撃が来た。あれは自らの力を内側に閉じ込めて破裂させたとかではないか? そんなことできるのかといわれたら、そんなのは龍のやることだから分からないになるが。だいたいあの衝撃は何なのかまるで不明だしな」
「そうか刺し違い、相打ち狙いならやってもおかしくないな」
反論無くすっかりその気になったブリアンはしきりにそうだそうだというがジーナは考える。
あれが自分に向けての最後の抵抗だとしたらいったいその理由は? あの龍の態度からするに……
「……そんなに私に討たれるのが嫌だったのか?」
「あーなるほど、な。それだとかなり納得感が増すな。それだぜ隊長それそれ」
ブリアンが喜びながら手を握ってきた。これで全て解決だというように、いや違うとジーナは手を離した。
「短絡的に納得し過ぎだ。なんだお前といい隊員達といいついでにあの龍といい、みんな私に龍を討たせたくなくて仕方がないようじゃないか」
「待って待て落ち着いてくれ隊長。いやそれはだってさ、だって」
慌てているのはブリアンだがジーナは考えがまとまるまで待つことにし、あの時の言葉を思い出していた。
龍は自分に討たれるのを拒否していた『ジーナではないものに討たれるわけにはいかない……』と。
「そのだな隊長、これはここだけの話にして欲しいんだけどいいよな? 他所で話して貰いたくないんだ。まぁ隊長はベラベラあちこちに話すってタイプじゃないから大丈夫だけど、念のためだ」
「そんな危ない話なら無理して話さなくてもいいぞ」
「危ないというか、その笑われるというか、そういう類の仮説なんだがよ……もしかして隊長って龍の一族じゃないのか」
あまりの言葉にジーナは理解ができなくしばらく黙ってからやっとその言葉が頭に染み込んできたために弾き飛ばすように、返した。
「そんな馬鹿な!」
「馬鹿なのは分かってる。だから人には話さないでくれ。これで受勲の話が無くなったらあんまりだからな。仮にだよ仮に、妄想でしかない仮定で仮説だが、馬鹿といわずに聞いてくれ。龍がさ隊長が同族のものだと気づいたからこそ同族殺しを防ぐべく、自爆した。ほら同族同士で殺したくないって人情じゃん」
「龍に人情などあるものか」
「なら龍情ってやつで。いや冗談ではなくてさ、だって隊長も固まってたろ。あの龍の瞳の光りにさ。隊長と同じ金色の光りが直撃して他の誰よりも固まっていてよ」
言われてジーナはまた固まった。そうだあの龍の金色。龍の鱗が紫に見えた幻覚と同じく、あの光も同様の幻視だと思っていたが、この男はしっかりと見ていた。同じ金色であると。
「そんなことは私にだって分からない」
「でも関係はあるでしょう。いやこんなの偶然では片付けられない。まぁこれだけでなくて俺はずっと前から隊長が龍の関係者だと睨んでいたぜ。龍への信仰が無いのに龍のために誰よりも戦って、待てよ首を振らなくていい。不信仰者なのに龍身様や側近たちとの仲は良くて、だから否定しないでくれ。最後の最後の使命の時に、あんたは龍を斬ることに躊躇い固まった。そういうことだったんだよ。だからこの役目は俺が引き受けたかった。受勲したいというのもあるけど、そういう気持ちもあったことは理解してほしい」
違う、と言うべきなのにジーナはその言葉が口から出せなかった。
羅列された事柄の一つ一つはそうではないと口では言えるが、行動ではその言葉を裏切り嘘をつくこととなる。
壁があり、心と体を分かつ一点が自分の意識、そう私は龍を討つものでしかないのだというそれのみであり、そしてそれはジーナという存在の核であり、それがこの世界とのズレを生じさせているのだろうか。
「そうは言うが私は龍への信仰には決して目覚めることは無い」
「口ではそう言うけどあんたはもうすっかりそれだよ。まぁ最近ではなくて昔から……ソグにいた頃からだけどな」
ブリアンがまたなにかおかしなことを言い出したのでジーナは聞きたくないと立ち上がると、言葉がその身体を斬り裂いてきた。
「ソグで龍の護衛をしていた頃のあんたはすごく楽しそうだったな」
「嘘だ」
ジーナの身体はあの頃の苦痛が甦った足元から鳩尾に背から肩にそして首に、その絞め付けるものが這い上がる。
「俺だけの感想じゃないみんなの感想だ。それまでのあんたは戦い以外に興味のなく望むのは戦場という一人の修羅だった。元々そういう人だったのかと見ていたけど、違った。あの任務に就いてから雰囲気が変わったよ。それで分かったんだあんたは本来そういう人だってさ」
なぜこんなに認識に差異が生まれるのか? だからああまでみな自分に構うのかと。だがどうしてここまで?
混乱しているなかジーナの鼻先にソグの匂いがした。はじめに認識した龍の館のあの匂い。あの香木の匂い、あの最初の日の香り。
「あっそうそうこれキルシュから。ソグの香木だってさ。なんか隊長はハイネちゃんが香木を焚いて嗅がせたら起きたってことらしいな。だからお祝いにだってさ。受け取ってくれよ」
こちらの反応などお構いなしにブリアンは香木をジーナに押し付け立ち上がった。
「じゃあ俺はもう行くよ。受勲の打ち合わせがあるしそれと今後のことについてもな。隊長はどうするんだ? 第二隊が解散した後はさ。ほらみんな病み上がりで気を遣って話していないだろうが考えはあるのか」
「……解散は近いのか?」
「そんなことはない。中央の復旧の目途が立ち龍身様が龍となられた時が戦争の終わりだから、その時だろうな。俺は近衛兵になる方に進む。キルシュもそれを望んでいるからな、悪くは思わないでくれ」
「全然悪いとは思っていない。頑張ってくれ」
「それで、あんたは?」
ブリアンは心配そうに、寂しそうに尋ねた。迷子に話しかけた時にそういう声をするのだろうか? ジーナはそれを連想した。
「心配しなくていい。もとより決まっている。私の進む道は一つだったからな」
答えるとブリアンは笑った。キルシュのよく自慢する笑顔、裏表のない眩しいそれをジーナも好きであった。
「内容は聞かないぜ。あんたはどう選ぼうときっと正しき方へ、もっと言えば龍のためになる方を選ぶだろうからな」
「そう思うか?」
ブリアンの腕が首に巻きついた。
「思うに決まってる。今までそうだった。だからこれからもそうだ。俺も隊みんなもそう思っている。あんたには龍の血の汚れはない。祝福はまだ続いている。これからもずっとだ」
「……そう思っていてくれ」