こちらヒロイン2人がラスボスの魔王と龍になります。
私のことを綺麗と言いなさい
また意味不明なことを言って……とジーナは問い返すがハイネは笑い出した。
「ふふっふふふっもういいです、はい。あっそういえばこの服どうです」
「えっ? 礼服のこと? おい急に話を変えすぎだ。ああまぁいいや。それは、その近すぎて見えない」
「さっきまじまじと見てましたよね?」
見ていたがそれは突然現れたハイネを見ていただけで服はそれほどには。
「分かった見るから離れて」
そう言うも、だがハイネは離れない。
「いいからここで、教えて。はじめに見た印象でいいんですよ。それが私は聞きたいのですってば」
そうなると答えは……いや、そうは言えない。
「……あれだな。東の服は華美すぎるからな」
「えっなに? 全然聞こえませんよ」
何を言っているんだとジーナはハイネを見るが、その眼は真剣であるので言い直すことにした。
「こっちの服は派手だなと言ったんだが」
「なんです! もっとわかりやすく言ってくださいよ」
ハイネが叫ぶとジーナも同じ声量で返した。
「分かりやすいだろうが。それにこんなに近くにいて聞こえないとかもないだろ」
「いいえそんなことはありません! 近くにいても聞こえない時もありますし簡単な言葉だって分からないこともあります。今のあなたのような言葉は聞こえませんし分かりもしません。だって私はあなたの心に対して聞いているのに、あなたは自分の心以外で答えているのだから」
鋭い視線を向けているハイネが握る手に力が加わった。よく知るいつものこの力具合。
ジーナはこういう時のハイネには常に引き摺り込まれるものだなと思った。
この手で、自分よりも小さな手で、自分よりも弱い力であるのに、どうして私を遠いところへ深いところへ連れていこうとするのか……
「お得意であるはずの隠し事まで下手になっていますね。私の前ですと嘘も隠し事も通じなくなっている段階かもしれませんが。けどまぁ言えないのならいいですよ。私があなたをつけてきた理由の一つにこの礼服の感想を最初に聞きたかったというのがありますが、誰か他のどうでもいい男の方に聞きますから」
「綺麗、だな」
ジーナは心の声みたいに実際に出しているのか自分でもわからないほどの声を出すと胸に衝撃が来た。ハイネが、叩いた。
「いきなりなんですそんな大きな声を出して! ああびっくりした。そんなの分かっていますよだけど意外です。あなたってそんな言葉を知っているのですね」
ハイネの笑顔が侮蔑にも見えたのでジーナは頭に血が昇った。
「知っているに決まっているだろ」
「使わない癖に怒らないでくださいよ。私は初めて聞きましたよ」
「ハイネならいつも言われ慣れている言葉だろうが」
「他の人が私に言ったからといって、あなたが私に言わないという理由にどうしてなるのです? ちっとも分からない」
どうしてか微笑んでいるのかとジーナはハイネを怪訝な眼で見ているとまた胸を叩かれた。
「あなたは私と一緒にいるのならその言葉を使う時がいっぱいあるはずなのに、今日はじめて聞きました。たくさん言うべきなのに今日が初めてなんて」
「なんだその自信は」
「あなただってさっき認めたのになんでそんなことを言うのですか?」
「それは、その」
「とにかくあなたが思っていても言わない理由は私には分かりますよ。それはまずあなたがケチ臭い男だからです。自分の感情を人に伝えるのがもったいないと謎に思い込んでいる。これです、はい」
「もったいないなんて思っていない。わたしはただ……」
ただ……なんだというのか? ジーナは自分でも分かるはずもなく黙ると合いの手のようにハイネがすぐに入った。
「ただぁ? 言い訳は何です? 歯切れが悪い。あなたはいつだってそう。あれですね言語化できないのですね? 中央の言葉の勉強が欠落しているのでしょうかね? それとも……隠さないといけないことでも、あるのですか?」
これは違う、とジーナは思うも思考はそこで途切れ目蓋を閉じた。どうしてこれは露わにしては駄目なのか?
「その隠し事をすごくすごく大事なものだとしている。あなたは特別なのですか? そうですね。あなたは自分がすごく特別だと思っている節がありますし、なにか深い隠し事があります」
手に伝わるハイネの熱が上がり距離が近くなるが、ここでもハイネは動いていないその場に立っているだけ、では何が近づいているのか?
「特別だとか、そうではない」
「そうではないですか……ならそうですね……もしかしたらあなた、その秘密を打ち明けたら自分がいなくなるとでも思っているんじゃないですか?」
頭の中が真っ白となりジーナは自分がそこにいることを見失いそうになるもハイネの手がそこにあることがかろうじて倒れることを防ぎ、閉じていた目蓋が開く。
するとそこにはハイネの気持ちよさそうに蕩けていく顔があり、怖いのでまた瞼を閉じた。
「相変わらず自意識過剰もいいところですよ」
ハイネが言うとジーナは手から何かが離れるのを感じた。手が離れたのだろう。
同時に熱も消え温もりからすぐに寒さへと変わりそれだけが手に残るなかジーナは瞼を開くと、意識は元の世界に戻っていた。
「ではひとまず事情聴取はここまでにしてあなたを解放いたします。お疲れ様でした」
「これってそういうこと?」
「だって尾行して捕まえて話をしたのですから形式的にそうですよね。あなたにも僅かな仕事が御残りでしょうからまずそれを済ませてきてください。それでいまどこに行くのですか?」
まずは? とジーナは引っ掛るが気にしないことにした。
「ああバルツ将軍のところに。なにか話があるようで」
「それはすぐに済みますね。そうしたらあなたはもう何も用事がないのでしょうから私の用事に付き合ってくださいね」
柔和であったハイネの表情が一瞬険しくなったとジーナは見て取り警戒心が働くも、首を縦に振った。
「わかった」
短くそう言うとハイネは驚いて言葉に詰まらせながら返した。
「やけに素直なのが気になりますね。あなたらしくもない」
「これだ。ああ言えばこう言うでハイネは私にどうして欲しいのだ」
「それはこっちの台詞ですよ。あなたってどこまでもめんどくさいですよね。こんな議論をしている時間は惜しいですよね? だったら私の話に無条件で頷いてください。反論は無しですよ」
「していないが」
「ほらした! 落ち着いて聞いてくださいね。バルツ様との用事が済みましたら真っ直ぐに中央西の広場の入り口に来てください」
その場所とは女性寮の斜め前に位置する広場であり、例の女性寮の机が先約で使えない日は代わりにそちらを使うということがあり、ジーナにとってはあちらに比べて大分心休まる場所でもあった。
あっちでなくて良かった、とジーナは心の底から思った。
「分かったそこに行くが何をするんだ?」
「どうしました? つまらない反論をしないなんて逆に熱でもあるんじゃありません? ふふっ何をするのかを聞く前に承諾するなんて、あなたらしくないですがとても都合が良くてありがたいです。することは大したことありませんよ。私と一緒にお話してお茶を飲む、これだけです」
これが罠だな、とジーナはハイネを見るもその表情に変化を現さない。
「二人で、だな」
そうでなければ、と思うもハイネは考えるまでもなく言う。
「はい二人で、です。私はその休憩が終わった後は龍の儀式のためにこちらにはしばらく戻りません。つまりはジーナとは少しの間会えなくなりますからね。知り合いとしてこれぐらいしておきましょう」
「……私でいいのか? というかどうして私が?」
「だからあなたですよ。だってあなただけですもの。この儀式に関わる予定の無い人なんて。知り合いは全員一緒に仕事をしますから、こんなことせずに済みますからね。あなただけですよ、あなただけ。そういうことです。あなたは一人で寂しいでしょうしね」
「寂しいとか心配は無用だが、そういうことか」
龍の誕生を望み願うも儀式を祝わないものであるこの世界でたった一人のもの。呪われたこの身。
「いつものと同じことをするだけです私達がずっとしてきたことを」
「そういうことが大切なんだと言いたいのだろ?」
何かが二人の間を横切ったのか音が時が止り、ジーナはハイネの顔を見る。
そのいつも見る顔が知らない女に、見たこともない女に見え、だからこそか心の奥から何かがこみ上げてきて口の中に留まるが、その感情の名前がなんであるのかはジーナはまだ知らない。ずっと知らずにいる。
ジーナは口を開くも、言葉は何も出てこない。もしもその言葉を知っていたら……とジーナは思っているとハイネは吹きだした。
ジーナにはそれがどこかわざとくさい音に聞こえた
「どうしました? 突然おかしな顔になったり急激に賢くなったり。やはり今日のあなたはおかしいです。きっと熱があるはずなのでお薬も持ってきますから来てくださいね、ではまたあとで」
早口になり逃げるようにして去っていくハイネの背中を見送りながらジーナは可能性を考え出した。
抵抗感があるもののジーナは考えざるを得なかった。広場で仕掛けが必ずある。
いまの胸騒ぎもそうでありハイネの態度もそう考えざるを得ない。ハイネは私を捕えに来る。
だがジーナはその確信と同時に逃走という発想がすぐには出てこなかった。
まだ捕まるわけにはいかないが、まだ逃走する時でもないとすれば自分はいったい何を待っているのか?
何を必要としているのか? ハイネと会うことによって何を得ようと……
「ふふっふふふっもういいです、はい。あっそういえばこの服どうです」
「えっ? 礼服のこと? おい急に話を変えすぎだ。ああまぁいいや。それは、その近すぎて見えない」
「さっきまじまじと見てましたよね?」
見ていたがそれは突然現れたハイネを見ていただけで服はそれほどには。
「分かった見るから離れて」
そう言うも、だがハイネは離れない。
「いいからここで、教えて。はじめに見た印象でいいんですよ。それが私は聞きたいのですってば」
そうなると答えは……いや、そうは言えない。
「……あれだな。東の服は華美すぎるからな」
「えっなに? 全然聞こえませんよ」
何を言っているんだとジーナはハイネを見るが、その眼は真剣であるので言い直すことにした。
「こっちの服は派手だなと言ったんだが」
「なんです! もっとわかりやすく言ってくださいよ」
ハイネが叫ぶとジーナも同じ声量で返した。
「分かりやすいだろうが。それにこんなに近くにいて聞こえないとかもないだろ」
「いいえそんなことはありません! 近くにいても聞こえない時もありますし簡単な言葉だって分からないこともあります。今のあなたのような言葉は聞こえませんし分かりもしません。だって私はあなたの心に対して聞いているのに、あなたは自分の心以外で答えているのだから」
鋭い視線を向けているハイネが握る手に力が加わった。よく知るいつものこの力具合。
ジーナはこういう時のハイネには常に引き摺り込まれるものだなと思った。
この手で、自分よりも小さな手で、自分よりも弱い力であるのに、どうして私を遠いところへ深いところへ連れていこうとするのか……
「お得意であるはずの隠し事まで下手になっていますね。私の前ですと嘘も隠し事も通じなくなっている段階かもしれませんが。けどまぁ言えないのならいいですよ。私があなたをつけてきた理由の一つにこの礼服の感想を最初に聞きたかったというのがありますが、誰か他のどうでもいい男の方に聞きますから」
「綺麗、だな」
ジーナは心の声みたいに実際に出しているのか自分でもわからないほどの声を出すと胸に衝撃が来た。ハイネが、叩いた。
「いきなりなんですそんな大きな声を出して! ああびっくりした。そんなの分かっていますよだけど意外です。あなたってそんな言葉を知っているのですね」
ハイネの笑顔が侮蔑にも見えたのでジーナは頭に血が昇った。
「知っているに決まっているだろ」
「使わない癖に怒らないでくださいよ。私は初めて聞きましたよ」
「ハイネならいつも言われ慣れている言葉だろうが」
「他の人が私に言ったからといって、あなたが私に言わないという理由にどうしてなるのです? ちっとも分からない」
どうしてか微笑んでいるのかとジーナはハイネを怪訝な眼で見ているとまた胸を叩かれた。
「あなたは私と一緒にいるのならその言葉を使う時がいっぱいあるはずなのに、今日はじめて聞きました。たくさん言うべきなのに今日が初めてなんて」
「なんだその自信は」
「あなただってさっき認めたのになんでそんなことを言うのですか?」
「それは、その」
「とにかくあなたが思っていても言わない理由は私には分かりますよ。それはまずあなたがケチ臭い男だからです。自分の感情を人に伝えるのがもったいないと謎に思い込んでいる。これです、はい」
「もったいないなんて思っていない。わたしはただ……」
ただ……なんだというのか? ジーナは自分でも分かるはずもなく黙ると合いの手のようにハイネがすぐに入った。
「ただぁ? 言い訳は何です? 歯切れが悪い。あなたはいつだってそう。あれですね言語化できないのですね? 中央の言葉の勉強が欠落しているのでしょうかね? それとも……隠さないといけないことでも、あるのですか?」
これは違う、とジーナは思うも思考はそこで途切れ目蓋を閉じた。どうしてこれは露わにしては駄目なのか?
「その隠し事をすごくすごく大事なものだとしている。あなたは特別なのですか? そうですね。あなたは自分がすごく特別だと思っている節がありますし、なにか深い隠し事があります」
手に伝わるハイネの熱が上がり距離が近くなるが、ここでもハイネは動いていないその場に立っているだけ、では何が近づいているのか?
「特別だとか、そうではない」
「そうではないですか……ならそうですね……もしかしたらあなた、その秘密を打ち明けたら自分がいなくなるとでも思っているんじゃないですか?」
頭の中が真っ白となりジーナは自分がそこにいることを見失いそうになるもハイネの手がそこにあることがかろうじて倒れることを防ぎ、閉じていた目蓋が開く。
するとそこにはハイネの気持ちよさそうに蕩けていく顔があり、怖いのでまた瞼を閉じた。
「相変わらず自意識過剰もいいところですよ」
ハイネが言うとジーナは手から何かが離れるのを感じた。手が離れたのだろう。
同時に熱も消え温もりからすぐに寒さへと変わりそれだけが手に残るなかジーナは瞼を開くと、意識は元の世界に戻っていた。
「ではひとまず事情聴取はここまでにしてあなたを解放いたします。お疲れ様でした」
「これってそういうこと?」
「だって尾行して捕まえて話をしたのですから形式的にそうですよね。あなたにも僅かな仕事が御残りでしょうからまずそれを済ませてきてください。それでいまどこに行くのですか?」
まずは? とジーナは引っ掛るが気にしないことにした。
「ああバルツ将軍のところに。なにか話があるようで」
「それはすぐに済みますね。そうしたらあなたはもう何も用事がないのでしょうから私の用事に付き合ってくださいね」
柔和であったハイネの表情が一瞬険しくなったとジーナは見て取り警戒心が働くも、首を縦に振った。
「わかった」
短くそう言うとハイネは驚いて言葉に詰まらせながら返した。
「やけに素直なのが気になりますね。あなたらしくもない」
「これだ。ああ言えばこう言うでハイネは私にどうして欲しいのだ」
「それはこっちの台詞ですよ。あなたってどこまでもめんどくさいですよね。こんな議論をしている時間は惜しいですよね? だったら私の話に無条件で頷いてください。反論は無しですよ」
「していないが」
「ほらした! 落ち着いて聞いてくださいね。バルツ様との用事が済みましたら真っ直ぐに中央西の広場の入り口に来てください」
その場所とは女性寮の斜め前に位置する広場であり、例の女性寮の机が先約で使えない日は代わりにそちらを使うということがあり、ジーナにとってはあちらに比べて大分心休まる場所でもあった。
あっちでなくて良かった、とジーナは心の底から思った。
「分かったそこに行くが何をするんだ?」
「どうしました? つまらない反論をしないなんて逆に熱でもあるんじゃありません? ふふっ何をするのかを聞く前に承諾するなんて、あなたらしくないですがとても都合が良くてありがたいです。することは大したことありませんよ。私と一緒にお話してお茶を飲む、これだけです」
これが罠だな、とジーナはハイネを見るもその表情に変化を現さない。
「二人で、だな」
そうでなければ、と思うもハイネは考えるまでもなく言う。
「はい二人で、です。私はその休憩が終わった後は龍の儀式のためにこちらにはしばらく戻りません。つまりはジーナとは少しの間会えなくなりますからね。知り合いとしてこれぐらいしておきましょう」
「……私でいいのか? というかどうして私が?」
「だからあなたですよ。だってあなただけですもの。この儀式に関わる予定の無い人なんて。知り合いは全員一緒に仕事をしますから、こんなことせずに済みますからね。あなただけですよ、あなただけ。そういうことです。あなたは一人で寂しいでしょうしね」
「寂しいとか心配は無用だが、そういうことか」
龍の誕生を望み願うも儀式を祝わないものであるこの世界でたった一人のもの。呪われたこの身。
「いつものと同じことをするだけです私達がずっとしてきたことを」
「そういうことが大切なんだと言いたいのだろ?」
何かが二人の間を横切ったのか音が時が止り、ジーナはハイネの顔を見る。
そのいつも見る顔が知らない女に、見たこともない女に見え、だからこそか心の奥から何かがこみ上げてきて口の中に留まるが、その感情の名前がなんであるのかはジーナはまだ知らない。ずっと知らずにいる。
ジーナは口を開くも、言葉は何も出てこない。もしもその言葉を知っていたら……とジーナは思っているとハイネは吹きだした。
ジーナにはそれがどこかわざとくさい音に聞こえた
「どうしました? 突然おかしな顔になったり急激に賢くなったり。やはり今日のあなたはおかしいです。きっと熱があるはずなのでお薬も持ってきますから来てくださいね、ではまたあとで」
早口になり逃げるようにして去っていくハイネの背中を見送りながらジーナは可能性を考え出した。
抵抗感があるもののジーナは考えざるを得なかった。広場で仕掛けが必ずある。
いまの胸騒ぎもそうでありハイネの態度もそう考えざるを得ない。ハイネは私を捕えに来る。
だがジーナはその確信と同時に逃走という発想がすぐには出てこなかった。
まだ捕まるわけにはいかないが、まだ逃走する時でもないとすれば自分はいったい何を待っているのか?
何を必要としているのか? ハイネと会うことによって何を得ようと……