旦那様に「君を愛する気はない」と言い放たれたので、「逃げるのですね?」と言い返したら甘い溺愛が始まりました。
甘くなっていませんか?
セルト様との勝負に負けた翌日。

私はいつも通りリーナに髪を結ってもらいながら、落ち込んだように顔を(うつむ)けていた。

「レシール様、顔を上げてくださらないとお髪を整えにくいですわ」

「だって……!」

「落ち込むなら顔を上げて落ち込んで下さいませ」

「うう……リーナの意地悪……!」

私はリーナの言葉通りに顔を上げると、鏡に自分の顔が正面から映った。

昨日とは違い、いつも通りの表情の私が映っている。

しかし頭に浮かぶのは、昨日の頬を染めて涙を溜めている自分だった。
< 28 / 44 >

この作品をシェア

pagetop