私をフッた元上司と再会したら求愛された件
 キャラメルラテは私の中のど定番だ。なんだかんだいつも頼んでしまうのは、前の職場にいた時から変わらない。そういえば以前、戸川さんとコーヒーを片手にそんな会話もしたっけ。でも、こんな些細なことも覚えてくれているなんて思わなかった。

『園崎のこと、忘れられなかった』

 なんでここで思い出しちゃうの、私。

 そんなこと考えてたら顔が熱くなってくる。ひとりで顔を赤くしているなんて、怪しさ満点だ。

 だから、戻ってきた戸川さんがキャラメルラテを渡してくれた時も、目を見てお礼を言えなかった。

「買ってきていただいて、ありがとうございます。今、お金を――」

「いいよ、それくらい」

「えっ! そんな、悪いです!」

「いいから。俺にカッコつけさせてよ」

 まただ。私、どれだけ戸川さんにときめけば気が済むんだろう。一度フラれているし、私を忘れられなかったと言う戸川さんの言葉も本気かどうかもわからないのに。

 カフェを出て、紙カップを片手に会社へ戻る。行儀は悪いけれど、心を落ち着けるためにキャラメルラテを一口飲む。今日はキャラメルの甘さよりコーヒーの苦味がやけに舌に残った。

 戸川さんは私をどうしたいんだろう。飲み会の時に言われた言葉がずっと残って、胸をモヤつかせている。

「……あの、私のこと忘れられなかったって、どういう意味ですか?」

 モヤモヤが吹き出して、私は思い切って戸川さんへ訊ねることにした。戸川さんは目をぱちくりさせた後、考え込むように顎に手を当てた。

「えっ? あ、うーん……まあ、ハッキリ言えば、園崎と付き合いたいと思ってるよ」

「……ッ!」

「でも、園崎を戸惑わせているのもわかってるから。今はこうやって一緒に仕事ができるだけで十分」

 柔らかい微笑みに目の奥がチカチカする。意識の外にあった胸の鼓動の音が、気付けば足音よりも大きく体の内側で鳴っている。
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