私をフッた元上司と再会したら求愛された件
 胸が騒めいているのは嬉しいからなのか、自分でもよくわからない。ハッキリ聞いてもまだ、戸川さんのことを信じられない自分がいる。好きだとハッキリ言われたわけじゃないからだろうか。もしかしたら一度告白された相手だからチョロいと思われてるのかも、という疑念すら湧いてくる。手近なところでちょっとつまみ食いしようかな、とかそんな感じ。……戸川さんがそんな不真面目な人とは思えないけど。

 疑心暗鬼に陥る自分はひどく醜くかった。でも私の周りを覆う臆病の殻を破れない。

 戸川さんが私なんかを好きになるわけない。それが私の中の大前提。二年前の失恋は、自分自身でもびっくりするくらい尾を引いている。

 自分のやりたいことを見つけて転職できたまではよかったものの、今の私は理想の自分とは程遠い。これといった取り柄がないから、せめて仕事ができる人間になりたかったのに、現実は空回りばかりだ。昔も今も、戸川さんに好いてもらえる要素はひとつもない。

 そして自分で自分を責めて、また自己嫌悪。もうキリがない。

 グルグルと考え込んでいる間に、ワッドウィズが入居するオフィスビルに着いてしまった。ウジウジ思考を一旦打ち切り、私は戸川さんに向き直った。

「……お忙しい中、送っていただいてありがとうございました」

「うん。園崎と話せて良かった。じゃあ、また次のミーティングで」

 ペコリと頭を下げていたところに、偶然社長の一条さんが通りかかった。
< 25 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop