私をフッた元上司と再会したら求愛された件
「おっ、園崎! 帰ってきたのか?」

 一条さんは私に向かって手を挙げた後、戸川さんをチラリと見た。

「一条さん、こちら、ラクリノの戸川さんです」

「ラクリノの! いつも弊社の園崎がお世話になってます。ワッドウィズの一条です。大切なプロモーションをうちに任せてくださってありがとうございます!」

 私が紹介するやいなや、一条さんは一歩前に出て戸川さんに手を差し出した。

「ラクリノの戸川です。こちらこそいつもお世話になっております」

 握手を交わした彼らは、そのままの流れで互いの名刺を交換した。

「どうですか戸川さん、うちの園崎は?」

「園崎さんは優秀で、いつもこちらの意見を丁寧に拾ってくださって助かっています」

「ああ、良かった! 彼女はうちのエースでして、今は御社のプロモーションに注力してもらっていますから、気合いが入ってると思いますよ。必ず御社にとって良い提案ができるかと」

 あからさまなお世辞が飛び交う中、一条さんが私の肩をポンと叩く。

「そうですね。彼女と仕事をするのは久しぶりなので、僕も楽しみです」

「久しぶり?」

「あっ、戸川さんとは前の会社で一緒で……」

「えっ? そうなの? 教えといてよ」

 苦笑いを浮かべといた一条さんが私の肩をポンポン叩く。すると戸川さんが一歩前に出て、私の腕をさりげなく引いた。私の肩をたたいていた一条さんの手が空を切り、彼は目をぱちくりさせている。
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