私をフッた元上司と再会したら求愛された件
「でも俺はバカだから、離れてから園崎が特別だったって気付いたんだ。傷つけてごめん。俺がいつまでも昔のことにこだわっていたせいで」

「昔のこと……?」

 同じコミュニティで親しい人間を作らない主義だから私の告白を断ったのだと、前に戸川さんは言っていた。ひょっとしてその主義は元となった原因があるんだろうか。

「……俺の親友が、当時付き合ってた俺の彼女と浮気しててさ。それがかなり精神的にきて、人付き合い自体を避けてたんだ」

 衝撃的な言葉に耳を疑った。親友が、戸川さんの彼女を取ったってこと?

 昔の恋愛話を聞いてショックを受けるどころか、端的な説明だけで不快感が込み上げてくる。私が堪らず眉をひそめると、戸川さんは軽く笑った。自嘲じみたその笑みに胸が切なくなる。

「浮気されていたこと自体は引きずってないんだ。でも中学から一緒で自分にとって一番仲が良かった友達に裏切られてたってのが、結構堪えて……もちろん同期とかは普通に話すけど、逆に言えばそれくらい最低限の関わりで十分だった。特に恋愛は、もうしなくていいとすら思ってたよ」

「そう、だったんですね……」

 前の職場にいた時、戸川さんが誰とも一線を画しているように見えたのは、その悲しい過去が原因だったんだ。クールでカッコいい、なんて彼の表面だけを見て騒いでいた過去の自分が恥ずかしく思えてくる。
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