二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~
当時の苦しさを思い出し、なにも言えずにいると、「さっきの未依の話だと、俺が結婚してると思ってたのか?」と続けて問われる。
否定しない千咲を見て、櫂は肯定と受け取ったらしい。
「どうして、そんな誤解を――」
「電話を聞いたんです」
こうして話し合いに応じた以上、黙っていても仕方がない。
千咲は二年前に聞いた電話の内容を話した。何度も反芻したせいでほとんど正確に覚えている。
「⋯⋯あの電話か」
千咲が話し終えると、櫂は片手で顔を覆った。
「盗み聞きするような真似をしてすみません」
「いや。ぐっすり眠っている君を起こすのが忍びなくて、場所を移動しただけだ。聞かれて困る内容じゃない」
「え?」
「あの電話の相手は、未依だよ」
「⋯⋯未依?」