二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~
「でも、まさかそんな誤解をされてたなんてな」
「⋯⋯すみません」
「いや。たしかに俺の声だけ聞いていれば、不倫がバレて離婚されそうになってる会話に聞こえるな」
櫂が小さく笑う。けれど、千咲はとても笑えない。
「改めて言うけど、俺は独身だし、大切にすべき人がいるのに他の女性に遊びで手を出すなんて絶対にしない」
櫂の強い意思を聞き、胸元で震える手をぎゅっと握りしめる。
「ごめんなさい、私⋯⋯」
あの夜、たしかに千咲は櫂によって気持ちを救われた。それなのに、一方的に既婚者だと思い込んで逃げ出したあげく、勝手に子供を生んだ。真実を確かめることもせず、二度と会わないとひとりで決めて、行方をくらましたのだ。
それがどれだけ身勝手で自分本位な行動か、わかっていたつもりだったけれど、すべてが勘違いだとわかった今、血の気が引く思いだった。
謝って済む問題ではないが、それしかできることが思いつかない。