二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~

「千咲。結婚はしてる?」

彼の硬く強張った声色で次に来る質問の予想がつき、千咲も再び緊張に包まれる。

「⋯⋯いいえ」
「単刀直入に聞く。紬ちゃんは、あの夜の……俺の子なんじゃないか?」

当時は祖母を亡くしたばかりで、あのあとすぐに恋人ができたとは櫂も考えないだろう。それに、彼は医者だ。紬の見た目の月齢から、自分の子供の可能性が高いと気付いても不思議はない。

千咲は瞳を閉じて、こっそり息を吐き出した。

彼がどんな返答を望んでいるのかはわからない。

けれど、嘘や誤魔化しを言わない櫂には、自分も同じように誠実でありたい。

迷った末に、千咲は小さく頷いた。

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