二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~
櫂の真剣な眼差しに、心が揺れた。
けれど紬を生むと決意した時から、もう恋愛はしないと心に決めたのだ。親が恋愛にのめり込んだらどうなるのか、千咲は身を以て知っている。
千咲には祖母がいてくれたけれど、紬には千咲しかいない。
だからこそ二度と恋はしないと誓っていたのに、まさか櫂に再会する日が来るなんて思ってもみなかった。
「私は⋯⋯」
うまく言葉にできないでいると、そんな千咲の葛藤をどう受け取ったのか、櫂はさらに言葉を続けた。
「急にこんなことを言われて戸惑うのは当然だし、すぐに決められないのもわかってる。だからまずは、少しずつふたりと距離を縮めたい。今度こそ、千咲の信頼を得られるように頑張るから」
「先生⋯⋯」
彼は千咲を責めるどころか、歩み寄ろうとしてくれる。それが不思議でならない。