二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~

「怒ってないんですか? 勝手に、紬を生んだこと⋯⋯」

当然だが、千咲自身は決して後悔していない。

紬を育てるのに必死で、どうしても平日の日中は保育園へ預けている時間が多くなってしまっているけれど、一緒にいられる時間を大切に、たくさんの愛情を注いで育てているし、これからもそのつもりでいる。

祖母を亡くし、肉親のいない千咲にとって、紬は血を分けた唯一の家族であり、自分以上に大切な存在だ。

けれど、櫂にとってはそうではない。

認知を迫るわけでも、養育費をせびるつもりもないけれど、たった一晩を過ごしただけの相手が知らないうちに自分の子供を生んでいたら、それはかなりの恐怖なのではないだろうか。

「怒るわけないだろ」

櫂は顔を顰めて否定すると、千咲に言い聞かせるようにゆっくりと思いを言葉にする。

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