【短】悪女、悪魔に転生する。


 思わずさけんだつもりだったのに、声が出た感覚もなく、混乱は増す一方。

 前を見てもうしろを見ても景色(けしき)が変わらないのは、そういう場所なのか、首を動かしているつもりでまったく動かせていないのか。

 現状を気味わるく感じ始めたとき、どこからともなく、ちょくせつ頭のなかにひびくような、気持ちわるい感覚の声が聞こえた。




「おぬし、人のうらみをたくさん買っておるのう」




 聞き覚えのない、おじいさんみたいな声。

 出会い(がしら)になによ!?と思ったら、「ならば」と声が続いた。




「転生先の種族はこれじゃ」


(転生先…?)




 そういえばあたし車に轢かれたんだった、と思い出して、じゃあ――と思考が動き始めた直後、強い眠気におそわれたように、また意識が遠のく。



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