【短】悪女、悪魔に転生する。
悪女、5歳になる
庭園を華やかに かざっている色とりどりの花々。
そのなかでも、あたしは地球のバラに似ている赤い花が好きだ。
交通事故で死に、生まれ変わってから5年。
あたしが転生した種族は、やっぱり“悪魔”で まちがいないらしい。
そして、悪魔が存在するこの世界は、地球とは ことなる異世界だ、というのもすでに受け入れた事実。
「お嬢さま、失礼いたします」
「ん?」
庭のベンチに座って、手入れの行き届いた花をながめていたら、執事に声をかけられた。
振り向くと、ベンチの背もたれに手のひらサイズの巨大なてんとう虫が止まっている。
いつのまにか飛んできたらしい。
ぶわっと“下から”強風が吹いて、てんとう虫の体が浮くと、執事は すばやく てんとう虫をつかんで、手のなかで にぎりつぶした。
その後、パッと開かれた執事の手から落下していった てんとう虫の残骸は、地面に空いた穴のなかに収まる。
なにごとも なかったかのように、ひとりでに地面がふさがっていくのも、先ほど風が吹いたのも、悪魔が使える魔法によるもの。