【短】悪女、悪魔に転生する。


「…あう?(え?)」


「生まれたぞ!この子は…」




 しゃべっているつもりなのに、自分の口から代わりに出ているのは赤んぼうの声。

 混乱したのはそれだけじゃない。

 まぶしさに なれて、目を開けたあたしの視界に映ったのは、浅黒い肌に、黒い髪と赤い目をした、非現実的な人間たち。


 いや、頭の両サイドから生えている、黒くて硬そうな角を見ると、はたして人間と言いきっていいのか。




「お…女の子だ!?」


「妹…!?」




 見開いた赤い目の瞳孔(どうこう)は、ヘビのように、たてに細長く。

 カパッと開いた口に生えているのは、ギザギザにとがった歯。

 おどろいた顔をグッと近づけて、あたしをのぞきこんでくる、成人の男女2人と、あたしとおなじ高校生くらいの男1人はまるで。


 人型の――




「あう…あ?(あく…ま?)」




 存在自体が、根っからの悪役。

 人間をおそう、極悪非道な種族として名高い――“悪魔”に、あたしは生まれ変わってしまったのかもしれない。



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