転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~
「リュシアナ様が陛下を経由して、この王宮から追い出した者たちは、すべてクラリーチェ殿下に関わりがあったということを」
「……あまり褒められたことだとは思わないけれど」

 リュシアナの記憶がないから肯定できないが、少なくともこれは告げ口である。

「そのようなことはありません。その者らに苦しめられていた人間からすると、リュシアナ様のやったことは素晴らしいことですから」
「カイルも? カイルもその一人だというの?」
「いいえ。俺は中庭で度々会うリュシアナ様に興味が湧いて、少々調べていったら……その、知ってしまっただけです。気を悪くされましたか?」
「ううん。私は……その辺りの記憶がないから」

 他人事のように思えてならなかった。さっきだって、お姉様の恨みを受けながらも、占い以外は心が揺さぶられなかったのがいい証拠である。

 民のために、お父様のために何が最善か。私は、私を大事に思ってくれている人たちのためにしか、動けない。頑張れなかった。

「俺はそのようには思えません。謁見の間での姿は、俺が惹かれたキッカケのお姿でしたし、今のようなお姿もまた、魅力的です」
「い、今? どこがよ」

 部屋に入ってきた時のだらしない態度が見なかったの?

「こんな風に、俺の前だけ無防備になるところです」

 カイルは私を抱き寄せ、そのまま口づける。もう私の許可など取らない。躊躇うことなく、貪るように深く長いキスをした。

「このような顔を俺にだけ見せてくれるのも、また」

 お姉様という脅威がなくなったからなのか。カイルの顔が迫ってくる途中で、私は意識を手放した。
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