転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~

第9話 リュシアナとしての振る舞い

 翌日の昼下がり。レース越しに差し込む光が、部屋を程よく暖める。外はまだ寒いから、と窓が閉め切られているため、レースが揺れることはない。その代わりに光を帯びたレースがキラキラと揺れて、私たちの目を楽しませてくれていた。

 そんな部屋の中で私は昼食をとり、ナプキンで口を拭う。横ではミサが、優雅に食後のお茶を入れていた。

 今までは当然のように享受していた、この光景。前世の記憶を取り戻した後だと、居た堪れない気持ちになった。

 あまりにも時間がなくて、朝食を抜いたり、疲れて夕食を食べ損ねたりしたことなんて、日常茶飯事だったのに。今は逆に、食事を取ることが仕事のような生活をしている。

 私が一言、「食べたくない」と発したら、きっとミサは大騒ぎをするんだろうな。
 
 なにせミサは、毎回、空になった食器を見ては、満足そうな顔でワゴンにしまうからだ。目覚めてからしばらくは、侍医の指示でスープばかりだったけれど、今は普通の食事に切り替わっている。それが回復した証だと、私でさえ分かるのに、ミサの態度は相変わらずだった。

「どうかなさいましたか?」

 私の前にカップを置きながら、ミサが心配そうに尋ねた。
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