転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~
「ちょっとね。以前の私は少食だったのかなって思ったの」
「なぜ、そのようなことを?」
「ミサの顔が嬉しそうだったからよ」

 それが悪い、というわけではない。けれど前世の記憶が戻ったのに、リュシアナの記憶が戻らないことが、私の良心を苦しめた。

「姫様は、量が多くても少なくても、出された食事は綺麗に食べる方でした」
「それは……好き嫌いがないということ?」
「いいえ。国の情勢や不作豊作の関係で……どこでその情報を仕入れるのか、姫様はその都度、量をお決めになられるのです」

 それはおそらく、中庭で仕入れるのではないかしら。たとえばカイルとかに。

 扉へと視線を向けると、案の定、顔を逸らされた。

「私が嬉しそうにしていたのは、リュシアナ様が綺麗に食事をされていたからです。以前と同じ、といってもいいほどでした」
「本当?」
「はい。私が見間違うはずはございません」

 前世の記憶が戻ったことで、体が馴染み始めたのかもしれない。体にだって、リュシアナの記憶は刻まれているのだから。
< 52 / 211 >

この作品をシェア

pagetop