生徒会長・柊木先輩のひみつ
「……それじゃあ、頼んでもいいか?」
先輩の言葉に、私は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
「はい!」
先輩と私は、調理台を挟んで向かい合う。
それぞれの場所に立ち、キャラ弁を作り始める。
彼のシャンプーの香りがふわりと漂って、それだけで胸がときめいた。
先輩は見かけによらず手先が不器用で、キャラ弁作りも苦戦している。
「ふふっ。先輩、そこはこうですよ」
「……悪い」
私が笑いながら教えると、彼は少し照れたように呟いた。
「それにしてもすごいですね、先輩。こんなに凝ったキャラ弁を毎日作ってるなんて、大変じゃないですか?」
私の言葉に、柊木先輩は眉を下げた。
「……ああ。もっと、器用にできたらいいんだが」
彼の完璧な姿しか知らなかった私は、初めて彼の隠された本音に触れた気がした。
「でも、この前空き教室で見たキャラ弁は、すごく完璧でしたよ?」
私がそう言うと、先輩は少しだけ目を潤ませた。
「……あれは、夜中に何度も練習してやっと成功したんだ。本当は、こんなふうにすぐに失敗するんだ」
彼はそう言って、こぼれてしまった桜でんぶを指先で拾い上げる。