冤罪で王子に婚約破棄されましたが、本命の将軍閣下に結婚を迫られています⁉︎
黒幕は、かつてユフィルナの父に仕えていた軍関係の貴族だった。その男は、出世を阻まれた逆恨みから、私生児である娘・ザネラを使ってユフィルナを陥れようとしていた。
ザネラは貧困の中で育ち、見返りとして「認知と王太子との婚約」を約束され、手を汚したらしい。
「私は生きるために必死だったのよ! あんたみたいに、何もかも恵まれて育ったお嬢様にはわからないでしょうね!」
ザネラの叫びに、ユフィルナは淡々と答えた。
「私は毎朝、父の代理で領地の帳簿を見直し、税と収穫の動きを確認し、民の訴えに目を通しています。時には地形図の読み方も学んでいます。それが、あなたにできますか?」
「な……そんなの、私にだって……」
ザネラは悔しそうに唇を噛むが、だんだん言葉が尻つぼみになっていく。
国王はユフィルナに公式の謝罪を述べ、シルファンは冤罪と婚約破棄の責任を問われて廃嫡となった。
ほどなくして、ユフィルナの父が帰還した。
娘がゼルナークと正式に婚約したと知ると、一瞬だけ厳しい表情を見せたが――。
「軍人など、とは思ったが……ユフィルナが選んだのであれば、正しいのだろう」
複雑そうな顔をしていたが、それでも静かに頷いた。
そして迎えた初夏の夕暮れ。窓辺のレースのカーテンが柔らかな風に揺れている。
そのユフィルナの部屋にはゼルナークがいた。
静寂の中、ゼルナークは彼女の左手を取り、指先をなぞるようにして銀の指輪をはめる。
「ようやく、この日が来ましたね」
彼は熱を秘めた瞳で彼女を見つめてきた。
「ありがとうございます」
ユフィルナは頬をほんのり染め、にこりと笑みを浮かべる。
「誰にも触れさせない。誰の前でも、そんな顔を見せないでほしい」
そう言って、彼はユフィルナの手を強く握った。
温かいというには熱すぎて、まるで――決して手放さぬよう、鎖で繋ごうとするような強い意志が流れてくるようだった。
「……あなたは、もう私のものです」
耳に滑り込んでくる掠れた声に、ユフィルナは顔を赤くして俯く。
胸が、きゅうと締めつけられる。
すでに何度も奪われた唇。そして二人だけの熱に溺れた時間。
あれが、夢ではなかったと、今また彼が確かめるように囁く。