愛を知った日
横を向いた私を鳳蝶くんが背後から抱きしめてくれた。
首に顔を埋めて
「明日は学校で手術には来れないけど終わったらすぐ来るから。絶対大丈夫だ」
そう言って頬にキスをくれた。
「うん。頑張るね」
それから鳳蝶くんは私が寝るまでトントンしてくれた。
次に目が覚めた時には鳳蝶くんは消えていたのでまるで夢のようだったが、置いてあるピンク色のハーバリウムが現実の証だ。
いよいよ手術当日。
朝から看護師さんやお医者さんなどが出入りし手術前の準備をする。この日はママも仕事を休んで来てくれた。
「大丈夫だからね。ママもパパもここで待ってるから」
「待ってるからね」
「うん」
両親が手術室の前までついてきてくれたがそこから先は自分1人だ。
寝て手術室まで運ばれる間ずっと白い天井を見ていた。不思議といざ始まるとなるとそれまでの恐怖や敏感な心が嘘のようになにも考えられなくなっていた。
そしていつの間にか手術室に入っていて武先生に話しかけられた。
「奏ちゃん、体調は大丈夫?」
「はい」
「これから麻酔を入れるけど痛くないからね。ただ眠たくなるだけだから」
「はい」
そう返事をすると口にマスクをつけられて何度か呼吸をしていると私の視界は真っ暗になった。
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