魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 さすがに地味な私とて、こんな素晴らしい衣裳部屋を前にして興味が湧かないほど達観していない。
 目移りしつつも、頭をもたげ始めた罪悪感を持て余す私にテレサは首を振る。

「いいんです。たとえ周りが辛いことで溢れていても、ずっとその中に身を浸していたら、苦しみが続くだけですから。どうか祝わせてください、私たちに……。あなたがここへ来てくれたことを」

 テレサから向けられた淡い微笑みの中に、私は彼女達がどれほど長い苦悩の時を耐えてきたのか、垣間見た気がした。
 それを思うと、今ここで私がすべきことは……ううん、そうじゃなくて。

 素直に喜ぶだけでいいんだ、彼女達がこうして歓迎してくれることを……。

「……そうよね。じゃあテレサ、教えてくれる? 私、あまりこういうものの選び方、よく知らないの。屋敷では机にばっかり向かってたから」

 すると、テレサは花咲くような笑みでもって応え、私の手を握ってくれた。

「はいっ、一緒に選びましょう! お兄様の好みは私がしっかり把握していますから! お姉様に見惚れて声が出せなくなるくらい……全力で身を飾るお手伝いをさせていただきます!」
「よ……よろしくね」
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