魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「うふふ……手間が省けたわね。ハクスリンゲン家の娘は丁度いいところに行ってくれた」

 王都の精霊教会大神殿内部。その中にある自室でヴェロニカは、丸いテーブルに広げた地図の上で何かの儀式を行っている。

 帝国全土が描かれた地図の表面、そのいくつかには黒く塗りつぶされたような場所があり、そこには漏れなく黒いチェスピースのような像が乗せられている。

「くふふふふふ……苦しみなさい。その絶望がまた、新たな絶望を呼び起こすのだから」

 そして彼女は、懐から金属のケースを出すと、取り出した血のように真っ赤な針を自分の指に深く突き刺す。

 そこから滴った血液が、真下にあった像を伝い、地図の表面へと染み込んでいく。その場所には【ボースウィン領】と記載され、ぽたぽたと血が弾ける度に、黒はどんどん濃度を増していった。
 それを確認するとヴェロニカは、禍々しい笑みを深くしてゆく。

「もうすぐよ、マルグリット。もうすぐまたひとつ呪いの種が孵り、芽吹いた災いが大地を食い荒らしてこの国を人々の苦痛で染め上げることでしょう。もうお前には何もできない。いずれ可愛いひとり娘もそちらに送るから、せいぜいふたり仲良く地獄の底で慰め合うといいわ……。ふ、ふふあははっ――!」
< 111 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop