魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 今、目の前にこんな風に言ってくれる人がいるのなら。
 私だって踏み出したい。自分からもっと、良い方向に変わっていきたい。

 私はぎゅっと掴まれていた彼の手を握り返すと、大きな声で宣言した。

「はい……! 私、ここで自分のやりたいことを探します!」
「それでいい」

 彼はふっと笑うと、私の腕を引いてホールの中央に踊り出す。するとテレサの指から軽やかで楽し気なメロディーが流れだし、私たちの背中を押してくれる。

 鍵から飛び出すワンノート、床を鳴らすワンステップごとに、私達は視線を交わしお互いのことを理解していく。思い出が、積み重なる。
 それは、本当に胸躍るひと時で――私はやっと、これまで歩んできた孤独な人生から引っ張り出してもらえた気がしていた。


 ……でも、その時遠い場所では後ろ暗い欲望と共に、大きな事態が動いていて――。
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