魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 そしてその下に輝くのは、空色の貴聖石。今やその表面にはなんの模様も浮かんではいないが、太陽の光を吸い込んできらきらと美しく光っている。私は隣に佇むスレイバート様を見上げて尋ねた。

「……今さらですが、本当によかったんですか?」
「ああ……どうせもう、あの中に俺の母親はいないしな。……きっと、親父と一緒にどこかで俺たちのことを見ててくれるさ」

 微かな寂しさを目元に浮かべつつも、スレイバート様は爽やかな笑顔で胸を張っている。
 彼もまた、闇の精霊の呪いの力から私を救い出す時に、母親の――おそらくアルフリード様と結ばれた精霊の声を聞いたらしい。となると、思えばサンクリィの村からあのペンダントを持ち帰った時から、彼女にはずっと守ってもらっていたことになる――。

 ちゃんとお礼を言えなかったのは残念だけど、精霊にとって一番の望みを果たせたのならば、私があれを身に着けていた意味はあったのだと思える。他の領地のふたつの精霊も元の土地に戻ったのか……闇の精霊との対峙以来、存在を感じることはなくなった。でも……。

(絶対に忘れません……あなたたちのこと)

 協力してくれた彼女たちだけでなく……永い間影で苦しんできた、悲しい気持ちに呑み込まれた人たちの遺志のことも、私は常に胸の片隅に置いておきたい。
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