魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 お披露目会が終了し少しずつ人が捌けていくと、私たちは町長さんにお礼を言って広場から離れていく。

「さあ……そろそろ行くか。南だから、ここから辿り着くにはしばらくかかるな」
「シャーレント領……ですね。ひどいことになっていないといいんですけど」

 闇の精霊の存在がひとたび消えても、災害や魔物たちの被害が完全に消えるわけではない。
 今回の目的地は、四大領地の最後のひとつ……火山地帯と荒野に覆われた南のシャーレント領。その地の領主が、魔物たちの大暴走により、近隣の領地に助けを求めたらしい。

 ボースウィン領とは大きく離れているけれど……それでもなにかできることがあればと、私はスレイバート様と一緒に出発を決意した。もしかしたら、各地に仕掛けられた呪いの種もまだ残っているのかもしれないし……。

「まあ、今の俺たちなら、なにがあってもなんとなかるだろ」
「ええ……そうですね。――あっ、ちょっと待っていてくれますか?」
「どこ行くんだ?」

 そんなスレイバート様の言葉に頷き返し、近くに留めてあった馬車に乗り込もうとする私の目に、あるものが映る。
 一言断りを入れた後……私はその場所に足を向けた。ひとりの少女が路肩でしゃがみこみ、声を押し殺して泣いている。
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