魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「だって、頼ってもらえねーとつまらねーだろ? 俺はお前に好きでいてほしいし、褒められてーの」
「――――!」

 なんの含みもない好意に照れてしまった私に対し、彼はさらに続けた。

「それに……自分だけで全部やったって、つまんねーじゃん。俺は、お前のできないことをやってやりてーし、俺のできないことはお前に任せたい。お互いにとってさ、必要な人間でありたいだろ。隣にいるならやっぱさ……」

 結婚した今も、こうした空気になってしまうだけで恥ずかしい私だけれど、でも……これは確かに大事なことだ。
 色んなことができることが悪いというわけじゃない。けど……私だって、誰かに自分のしたことを喜んでもらえたら嬉しいし、なにかしてもらえたら、素直に喜べる自分でありたいもの。

「だからお前は、前みたいにビスケット焼いてくれたり、疲れた時に膝枕してくれるくらいで丁度いいんだよ。あんまり無理して背伸びしようとすんな。急に完璧人間になって、俺のこと見向きもしなくなったら、寂しいだろ」
「……そうかもしれませんね」

 私も、強くなろうと鍛えすぎて重くなって、スレイバート様に抱き上げてもらえなくなっちゃったり……頭でっかちになりすぎて喧嘩になったり嫌われたりしたら悲しい。努力は大事だけど……大切な人が喜んでくれる自分でいること……今の私にとっては、きっとそれが一番なのだ。
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