魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 私にも見えた。なんとかして街を守ろうと、手に槍や盾を持った兵士たちが、侵攻にあらがっている。しかし、このままでは怪我人が出るのは免れまい。

「ど、どうしましょう……? このまま突っ込むんですか?」

 御者が大声でこちらに尋ねかけ、私たちの視線がルシドに集中する。彼は決断を迷っているようだったが、こちらをじっと見たあと、首を振る。

「いえ……一旦引き返しましょう。テレサ様とシルウィー様はボースウィン領の希望の光だ。ここで万が一にも、危険な目に遭わせるわけには参りません」

 ごくり、と私は喉を動かす。
 あんな数の魔物……こないだスレイバート様と一緒に襲われた時には比較にならない。
 テレサも肩を抱いて青ざめている。あの中に飛び込むなんて危険すぎるし、第一……割って入れたとしても、私たちにできることなんて――。

「そうね。逃げるしか……」

 私はそう言いかけて、ルシドの表情に潜む怒りを見た。
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