魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 彼は唇を血が滲むほど噛み、懸命になにかを堪えている。そうだ……彼はあそこに家族や、仲間がいるのだ。
 本心なら、今すぐにでも飛んでいきたいはず。なのに、私たちがいるせいで自由に動けない。そんな彼を見て、私は――。

「――ルシド、どう? あなたの力で私たちを守りつつ、安全に街の中へ送り届けることはできない?」
「――――! ちょっと待ってください! まさかあんなところに飛び込もうというんですか!?」

 驚いたルシドは私に食って掛かる。

「そんなことをすれば、上手くいったとしても魔物を倒さない限り、あそこから脱出できなくなるかもしれないんですよ! 僕は、スレイバート様からおふたりのことを任されて……」
「――でも、あの中にはあなたの家族がいるんでしょう!」
「…………」

 黙って俯く彼の肩に、私は手を添える。

「誰だって、家族を目の前で見殺しになんて、したくないに決まってる。そりゃ私だって、わざわざ危険に近づきたくはないわ。けど……あなたにそんな思いをして欲しくないの。それに、ここはボースウィン城からそこまで離れてはいないから。援軍さえ頼むことができれば――あなたが居れば、どうにかそこまで保せられるんじゃない?」
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