魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「はは、どうした。お前らまでしけた面しやがって……。いつもと同じだ、ちょっと立ちくらみがしただけでこんなのは寝てりゃ治る。いちいち騒ぐな」

 そう言いながらも、彼は緩く唇の端を上げただけで動こうともしない。身体を起こす余力もないように思えた。

「やはり、ご無理をされ過ぎなんです……。いっそのこと、爵位だけでもどなたかに引き継いでいただき、もっと楽な場所で静養されるべきでは」

 そんな、ルシドの悔しそうな声に……しかしスレイバート様は僅かに首を振って呟く。

「今のボースウィン領の状況を知ってるだろ。どこもかしこも自分の管理する街のことで手一杯だ。そんな中、今俺が仕事を放りだすようなことをしてみろ。ここぞとばかりに敵国がちょっかいをかけてくるだろうよ。せっかく、こいつのおかげで明るい兆しが見えてきたんだ……張りぼてみてーな領主でも、もう少しだけ、時間を、稼がねーと……」

 彼はちらりと横目で私を見ると、辛そうに目を閉じた。スレイバート様の額からは今もうっすら汗が噴き出し、強い呪いが彼の身体を蝕んでいるのが分かる。
 強情な彼に、それでもテレサは一緒になって懇願した。
< 161 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop