魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「うぅ……お兄様、お願いですから領地のことは私たちに任せて、どこかでお休みになっていてください! お顔を見れなくなっても、お話しできなくてもいいですから、少しでも長く……。私、お兄様がいなくなったら……もう」
「テレサ」

 だが、スレイバート様は妹を包み込むような優しい瞳で見つめると、涙を指で拭ってやりながら言った。

「お前なら、俺の気持ちが一番分かるだろ? 最後まで、ここにいたいんだ」
「……うう――っ……!」

 テレサは走り去り――「悪い、ルシド」「はい」――そんなふたりの短いやり取りがあって、私だけがこの場に残される。

 正直、どうすれば――何を言えばいいのかも、分からなかった。
 でも、今はかろうじて目の前に存在してくれているこの人と、あとどのくらい言葉を交わしていられるのか……。

 一週間後は、三日後は、明日は――そんなことを考えると、近付いて彼のことを確かめずにはいられなかった。

「「…………」」
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