魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 奇跡を起こす魔法士の力でも、彼は救えない。

 そんな中、私はまだ……こうして甘えているだけなのか。一番近くに寄り添い、大切なものをたくさん与えてもらったのに、なにも報いることもできないままで……?

 ――もう、変わらなければ。

「シルウィー……?」

 私は、彼の胸をそっと押して遠ざけると、頭を上げた。涙を拭き、しっかりと彼の顔を見つめる。

 彼は、私に安心できる居場所を作ってくれた。温もりに溢れた、いつまでも留まっていたいと心から思える、そんな場所を。でも、大切なものを得たのなら、次は守らないと……強くならないといけない。今度は私が、いつか誰かにそうしてあげられるように。

 魔法みたいな特別なことができなくても、その意志だけは胸に刻もう。

 そして、与えられたから返すのではなく、彼に贈りたい。今度は私から――今私が叶えられる、彼の最大限の望みを。

「――しましょう」
「…………は」

 気の抜けたような、か細い吐息がスレイバート様の口から漏れた。
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