魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 くしゃりと歪む、スレイバート様の顔を、私は最後まで見ていられなかった。
 強い眠気が生じ、私を昏睡状態へと誘っていく。少しずつ、興奮から覚めた身体の体温も冷たくなっていった。

 でも……。
 激しくなり始めた嗚咽の後、彼の大きくて温かい身体が私を強く抱きしめ、温めてくれたから……。

(よかった……)

 私がここに来たことは、きっと意味があったんだ――そう思うことができて。

 幸せの匂いに包み込まれながら――。
 私の意識は銀と紫の微睡みへ……すうっと溶け込んでいった。
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