魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 そんな私の姿を、同じ車内にいる日雇い侍女たちはくすくすと嘲笑う。自分たちだけ暖かそうな格好をして、毛布まで体に巻いて……。私はそちらに視線を向けると、なるべく穏やかに問い正した。

「あの、その毛布って、どこから出してきたのかしら。私も身体が寒くって、他にあるなら……」

 しかし、彼女たちはその質問にしれっと首を振った。

「これは私たちの私物ですわ。申し訳ないのですが、これ一枚しかありません。お肌が荒れたら困りますし、こんな質の悪いもの高貴なお方にお渡しするなんてとてもとても」
「そう……」

 よく言ったものだ。その毛布の隅にはハクスリンゲン家の紋章が刺繍されていて、馬車のどこかから持ち出してきたのは明白なのに。きっと、私を送り届けた後は盗んで帰り、お金にでも変えてしまうつもりなのだろう。当家の窮状もどうせ知られていて、目の前の小娘にはなんにもできないとたかをくくっているのだ。

 でもそれもその通りで、力ずくで奪い返すこともできず私が口を閉ざすと、彼女達は見下すようにこちらを見て、また雑談を始めた。これでもし私が体調でも崩しでもしたら、届け先で彼女達の責任が問われることになると忠告してやってもよかったけれど、どうせ行きずりの関係だ、そこまで親切にしようという気も起こらなかった。
< 20 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop