魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
(せめて無駄に体力を使わないよう、じっとしてよう)

 私だって、わざと病気にかかって苦しい思いをしたいわけじゃない。なるべく寒さに耐えられるようぎゅっと身体を縮めると、目を閉じ意識を心の奥に集中させる。

 こうしていると、侍女たちの会話や外の雑音、身体の寒さがわずかに遠ざかる。魔法の修業でよくやらされた瞑想だけど、私にとってはいつでも現実逃避の手段だった。

 眠っている時のように、一定のリズムで吸って吐いてを繰り返す。そうしていると、なにも考えなくてすむ――……。

(――…………。っなに⁉)

 その時――ガタタタッ! とひどい音がしていきなり馬車が急停止した。
 馬が甲高くいなないて、私はばっと目を開く。

「おい、どうしたんだ。落ち着けって!」
「ちょっと待て、これは、まさか……」
「な、なんなのよ」
「なにかあったの……?」
< 21 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop