魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 とんでもなく恥ずかしくなり、私は喉を詰まらせながら言った。

『そそっそ、そうですよね。呪いは解けたし、私は役目を果たすことができて……わざわざ婚約する必要も、もうありませんもの、ね……』
『あ、いや、そういうことを言ってんじゃねぇんだけど――』

 スレイバート様の珍しい歯切れの悪さも、こちらの言葉を肯定しているように思え――私は失礼にならないようにゆっくりと立ち上がると、ぺこりと礼をする。

『すす、すみませんでした。いつまでも皆さんのご厚意に甘えてしまい、貴重な時間まで使わせて……部屋で、少しだけ考えさせてください』
『おいシルウィー! 勘違いすんな。俺は別にお前が邪魔だとかんなことは……』
『分かってます……! ……でも、私も似たようなことを考えていましたから』

 最近訪れるようになったスレイバート様の執務室の机には、今日もいくつもの可愛らしい封筒が置いてある。あれはきっと、彼に恋する令嬢方からの恋文だ。貴族は情勢に敏感だし、ボースウィン領の復興を嗅ぎ付けて、早くも独り身の彼に熱視線を送り始めている。
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