魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 これだけの美貌に魔法の才能、おまけに統治者としての素質まであるとくれば、どんな女性だって(ほだ)されたっておかしくはない。
 ならば、私みたいな冴えない没落秒読み貴族家の令嬢などではなく、もっとこの家にとって有益な、家柄の優れた心身共に美しいご令嬢が彼の隣にはふさわしい。

 ……私が、彼に対して好意を持っているのは確かだ。けれど、それは今問題じゃない。

 今までとは違って、私が彼と結ばれる大義名分なんてどこにも存在しない。……どころか、私がこのまま近くにいれば、スレイバート様に辛かった時のことを思い出させてしまうかもしれない。

『お話、ありがとうございました。ちゃんとこの先のことを考えてみます』
「シルウィー……。ああ、そうしてくれ」

 私はにこりと笑みを浮かべ、そして彼もやはり必要以上に引き留めてはこなかった。
 退室後、私は部屋で真っ青な空を見上げながら、ぼんやりと考える。

 感謝すべきことに、今の私の暮らしに不足はない。ここに来てたくさんの大切な出会いを経験することができたし、スレイバート様は必要ならば身の回りのものを用立ててくださるだろう。なら……私がこれからこのボースウィン領のためにできることは……。
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