魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 感極まった村人たちの啜り泣きが響く中、その男性……当時のボースウィン公爵はゆっくりと幼かった女性の前に近づいて来ると、綺麗すぎて見惚れてしまった彼女の頭を安心させるように撫で、こう言ってくれたという。

『遅くなってすまなかった。恐ろしい出来事に、よく耐えてくれたな。君たちを見捨てることなどするはずがない。ここに住む領民は私たちの宝であり、子どものようなものでもあるのだから』

 女性が呆然と彼を見上げていると、その後彼は連れて来ていた騎士らに村の守護を命じ、魔物の発生源と見做されたある湖に単身向かってしまったそうだ。

 湧き出した瘴気が強すぎて村人はおろか、勇猛な騎士たちすら同行できないそんな恐るべき魔物たちの巣。村人は彼が無事に帰ることをひたすらに祈りながら、暮らしを少しずつ立て直していった。

 だが……数日経っても彼は帰らず、同時に魔物の被害もぷっつりと途絶えた。意を決し、村に留まっていた騎士たちは救出に命を懸ける覚悟で湖へと赴いた。すると……そこにはもう、アルフリード様も恐れていた魔物たちの姿も影も形もなかったという。

「――その後我々も躍起になって恩人である前領主様を捜索したのですが、お姿はおろか、遺留品すら見つからず……その後被害もぱたりと止んだこともあり、なんらかの強大な魔物と戦い、相打たれたのでは、と結論付けられました」
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