魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「うん……それじゃ、お言葉に甘えるわ」

 情けない限りだけれど、私は彼の差し出してくれた手に掴まり慎重に足場を踏みしめていく。
 相変わらずルシドは優しく、そして頼もしい。自分は歩きにくい場所を通ってでも、私に足を置きやすい場所を歩かせてくれる。親に連れられて歩く子どもは、こんな気分なんだろうか……。

「街の子どもは、皆こんな風に、家族と一緒に色んなところを旅しているのかな……」
「どうでしょうね。僕も家族と遊んでもらった記憶って、ほとんどないので。でも、こちらに来てからは、アルフリード様が父と懇意にしてくれてましたから、僕もよくボースウィン城内で、テレサ様を相手にかくれんぼとかしたっけな……」

 昔を懐かしむように、ルシドは目を細める。
 ひとりで屋敷の中に籠りがちだった私は、そんな遊びすらしたことがない。ルシドの説明を聞きながら……なるほど、あの広い城内ではさぞ探しがいがあったことだろうなと思った。柱の陰や並ぶ棚の後ろ、使われていない部屋のベッドに潜り込んだり、隠れるところなんて無数にある。

「ふたりだけだとつまらないって、たまにテレサ様がスレイバート様を連れてくるんです。でもあの人、面倒くさがりだからすぐに飽きちゃって。氷魔法で偽物を作って置いておいたり、僕らじゃたどり着けない建物の上で昼寝してたりするもんだから、テレサ様がずるいって泣き喚いて――それで、僕も風魔法を練習したんだっけな……」
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