魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「お前はこのまま連れ帰る。安全が確保できないならこんなところには置いておけない」
「ちょっと、待ってください! 勝手すぎます! 私にも色々と予定が……」

 そんな私の抗議を無視すると、彼はこちらを担ぎあげ、乗り込んだ公家の馬車の座席に突き飛ばした。すぐさま「出せ」と一声かけて、外の景色が動き出す。

「――っ! 横暴すぎる! あんまりです!」

 さすがに頭にきた私は、真っ向からスレイバート様に食って掛かろうと腰を浮かせた。

「バカが……」
「――――っ」

 だがそれも、隣にどかっと腰を下ろしたスレイバート様に簡単に阻止される。彼は掴みかかろうとした私の両腕を押さえた後、強引に抱きすくめたのだ。

「は、離……して」

 ふっと力が抜けていく私の耳元で、勢いの落ちた、枯れたような声が呟かれる。
< 262 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop