魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「お前が怪我でもしてたら、あれくらいじゃ済まさなかった。二度と……そんな危ない真似すんじゃねぇ」

 戸惑って、何も言えない私をしばらく腕の中に閉じ込めると、彼は私の肩をぐっと追いやり、そっぽを向いてしまう。しかし、その横顔には隠し切れない心配が滲み出ていて……。

「クソっ……」

 それきり――私も彼も一言も口を利くことなく、馬車はボースウィン城への道を辿っていく。

 感じた大きな憤りと、抱きしめられた時の胸の高鳴りが中々混ざり合わないまま……えもいわれぬ息苦しさを感じた私は、膝の上に手をやりずっと俯いていた。

 そしていつしか、無言の私たちを収めた馬車はお城の門を潜ってしまった。

 せっかく持ち帰ったあのペンダントのことも……話しそびれたまま――。



 その頃、シルウィー魔石店では……。

「悪かったわねルシド。損な役回りをさせて」
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