魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 つまらない――などと感じることが贅沢なのだ。

 そう思い、私も自分にできることをと祈りのポーズを取った。今は瘴気は周りにはないけれど、この力しか私にはない。集中力をもっと高めて、いつでも自在に扱えるようでないと……。

 だがそうしていても――いつもなら一瞬で自分の世界に入れるのに、今回だけは昨日のことがちらついてうまくいかない。私の頭はまた悩みに引き寄せられていく。

(どうして、スレイバート様はあそこまで怒ったのかしら……)

 私を心配してもらえたことに関しては、感謝すべきだとは思う。
 でも……今の私は血筋だけの、ただの没落前の貴族令嬢。多少珍しい能力を持ってはいるものの、特段容姿にも優れてはおらず、腹心の部下を傷付けてまで守らせるほどではないはずなのに……。

(仕事が溜まって大変だったのかなぁ)

 そりゃあ彼だってひとりの人間だもの。呪いが治ったはいいけれど、急激な環境の変化が苦しくなって態度に出てしまうこともあるだろう。
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