魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「お前ってやっぱ……相当ややこしいな」
「えっ!? なにかお気に障りましたか? いけないところがあれば改めますけど……」

 どこが、とは言われずショックを受けた私。
 でも彼は少し声音を和らげると、ぞんざいに片手を振り――

「いや――別にいい。そのままで」

 それきり、目を閉じて寝息を立て始めてしまった。しばらく右往左往していた私も、規則的で安らいだ呼吸の音に気持ちが落ち着いてきて……自然の中という心地良さもあってか、だんだんと意識が保っていられなくなってくる。

 ――こうして共にいる時だけでも……彼の心が少しでも自由を感じられたらいいのに。
 ぼんやりとそんなことを思いながらうつらうつらしていると、耳にほんの微かな、掠れたような声が届く。

「――そんなだから、側に置いとけねーんだよ……」

 でも……それは悲しいことに野を渡る初春の風に流されるようにして、私の頭の中を通り抜けていってしまった。
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