魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「悪い、余計なこと言った。もう止めとこうぜこの話は。こっちはこっちで納得して生きてんだ。自分の幸せってのよりも、大事なもんもあるみてーだし……それでいいだろ」

 問いかけに見せかけた柔らかい拒絶。でも……その言葉に対する答えだけは、あらかじめ私の中に用意されていたように、すっと口から出た。

「それでも私は……あなたになにかしてあげたいって、思ったんです」
「チッ――」

 それに対し、彼は激しい舌打ちをして、また叱られると思ったけれど。その後――。

「きゃっ」

 どさっと、何の前触れもなく私の折り畳んだ両足の上に、乱暴に綺麗な形の頭が乗せられた。そして彼は不機嫌そうな表情で命じてくる。

「じゃあ、そこでじっとしてろ」
「は……はぁ」

 予想外の行動だが、これは……彼が私に甘えを見せてくれたと思っていいのだろうか。なんだかどきどきしながら、私は横倒しになった彼の髪に変な跡がつかないよう指で整えていく。そうしていると、彼の不満そうな両目が私を射抜いた。
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