魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 なぜなんだろう。家ではこんなこと一度も思い出さなかったのに。
 見えなかった記憶にいる父の顔は、温かく笑っていたような気もする。
 それは私の願望が作り出した都合のいい妄想なのかもしれないけど、でも妙に真実味があって、なんだか悲しくなる。

 いったいどうして、こんなことになってしまったんだろう。どうして――……。



「あっ……目を覚まされましたのね。よかった……」
「う……」

 枕元から小さな声が聞こえて、私はうっすらと目を開けた。額に被さるひんやりとした布のようなものが瞼を押さえていて、目が開けづらい。

「大丈夫ですか、痛むところは? 目に見える傷はできる限り治させていただいたのですけれど……」

 しばらくするとそれがどけられ、ぼんやりと滲んでいた視界が定まってくる。
 どうも私は泣いていたらしい。あの変な夢のせいだ、この年で夢を見て泣くなんて、子供みたいで恥ずかしくなる。
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