魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 どこかから響いた声に、スレイバート様が飛び出そうとしたが、私は必死で彼の背中にぎゅっとしがみついた。

「――――!? シルウィー、離せ! でないとやつを……」

 そんなスレイバート様の叱声にも、私は腕の力を緩めることができない。

 もうなにがなんだかわからず、怖くて仕方がなかった。
 死にかけたことは何度かあるけど、それとは全然違う。いきなり知らない誰かから殺したいほどの憎しみをぶつけられるなんて、思ってもみなかったから……。

「ったく……仕方ねーな。ほら、もう大丈夫だから」

 スレイバート様の身体から脱力の気配が伝わってくる。

 いつの間にか、ペンダントから発生した光は止んでおり、彼は困った様子で震える私を抱き締め、背中を撫でてくれた。その手の優しさが、ゆっくりと私の恐怖を取り除いていってくれたけれど……その後事情を聞かれている間も、私は子どものようにスレイバート様の手を離すことができなかった。

 ――そして後に私は思い知る。この恐ろしい事件の裏側にどんな悲劇が仕組まれていたのかを……。
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