魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 駆けつけてくれた彼が、私を庇うように青年を睨みつけていた。その口元は、ぎりぎりと苦々しそうに歪められていて。

「おいてめー……クリム爺の屋敷をぶっ壊した上に人様の婚約者を襲っといて、ただで済むとは思ってねーだろうな」
「ボースウィン公爵、スレイバートっ……」

 一方、赤髪の青年の顔にも、大きな焦りが滲んでいた。
 それほどスレイバート様の存在は彼にとって脅威なのだろう。取り乱しながらも、その行動は素早く――。

 彼の手がなにかを放った。反応したスレイバート様は魔法で防ごうとしたが、それは直前に破裂して、辺りをなにも見えない黒霧で包み込む。

「っ……これは。シルウィー!」
「……は、はい!」

 スレイバート様の声でそれがよくないものだと気付かされた私は、とっさに瘴気吸収の力を発動した。それで霧はなんとか辺りに広がる前に、私の身体の中へと吸い込まれていく。

 だが……その頃にはもう青年の姿は近くにはなく。

「――黒髪の聖女、あんたのせいで、オレの妹は……! 待ってやがれ、次はこの手で必ず殺してやる!」
「逃がすか――!」
< 369 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop